将棋の雑学

将棋の駒の並べ方

将棋は駒には並べ順があります。普段将棋を楽しむ時には気にすることもないかと思いますが、少し本格的な雰囲気で楽しみたい方は是非覚えてみてください。長い歴史を経て受け継がれてきた作法をあなたご自身が受け継ぐわけですから、いつもより引き締まった対局が楽しめるかもしれません。並べ順は「伊藤流」と「大橋流」の二通りがあり、プロ棋士の間では大橋流が主流のようです。

 

将棋の駒の並べ方(伊藤流・大橋流)

先手・後手の決め方

振り駒

将棋の先手と後手を決めるには「振り駒」という方法を用いるのが一般的です。振り駒とは、駒の「歩」を3枚または5枚使い、表と裏の多く出た数で先手と後手を決める方法です。日本将棋連盟対局規定では5枚の振り駒が正式ルールとして定められており、上位(格上)の人が駒を振るのが一般的な作法となっています。「歩」と書かれた表面が多い場合は振った人が先手となり、この状態を「振り歩先(ふりふせん)」と呼びます。駒が直立してしまったり重なってしまったりした場合、その駒はカウントしません。同数の場合はもう一度やり直します。ジャンケンなどで決めてもいいかと思いますが、せっかく長い歴史の中を伝わってきた作法ですので、歴史を楽しむつもりで「振り駒」をしてみてはいかがでしょうか?

将棋の駒の意味

駒の意味

将棋の一列目に配置されてる駒は平安時代の貴重品を表しています。玉将は玉宝(宝石)で金や銀より高価とされていました。桂馬、香車も当時は高級品だったスパイス(調味料)の意味があります。二列目の飛車、角行は武器を表していると言われていて、自軍の宝を守ったり相手の宝を奪う重要な役割があります。三列目の歩は文字通り歩兵(兵隊)の意味があり一歩ずつ確実に相手の陣へと歩みを進めます。駒の意味がわかると駒への愛着が少しだけ湧いてくるかもしれませんね。

「成金(なりきん)」の語源

成金(なりきん)

「成金」というと急にお金持ちになった人をイメージすると思いますが、その語源は将棋の「歩(ふ)」にあります。将棋の駒では最も弱いとされている「歩」が敵陣に入り「と金(ときん)」となり一気に「金将」と同格にまで成長することから急にお金持ちになった人を「成金」と言うようになりました。成金の表記は江戸時代末期には既に確認できますので、今の意味として使われ始めてから100年以上の歴史があることになります。

ちなみに、よくカタカナで「ト金」という表記を目にする事がありますが正しくはひらがなで「と金」です。これは「と」が金のくずし文字であることが由来となっています。また、金(きん)の当て字として同じ音の「今(きん)」が使われていたという説もあり、日本将棋連盟でもどちらが正解と言う答えは出していません。

「永世」の称号について

2017年12月5日午後4時23分、鹿児島県指宿市で行われた第30期竜王戦第5局で羽生善治棋聖(47)が渡辺明竜王(33)に勝ち、通算7期目の竜王位を獲得しました。これにより「永世竜王」の資格を得て「竜王、名人、王位、王座、棋王、王将、棋聖」全7タイトル全ての「永世」を達成する前人未到の快挙を成し遂げたことになります。

さて、この永世タイトルがどれくらい凄いことなのか例えようもないのですが、永世の獲得条件は以下の通りとなります。

永世七冠

 

永世竜王 連続5期 または 通算7期

永世名人 通算5期

永世王位 連続5期 または 通算10期

名誉王座 連続5期 または 通算10期

永世棋王 連続5期

永世王将 通算10期

永世棋聖 通算5期

 

どのタイトルも最低5年以上の年月が必要なだけはではなく、挑戦者となるまでに数年の積み重ねが必要なタイトルもあります。ちなみに「永世七冠」は正式な名称ではありません。また、王座だけは永世ではなく名誉という言葉が使われていますが、これは囲碁の世界で名誉王座というタイトルが将棋界に先行して存在したため、名称を合せたと言われていますので特別な違いはありません。2017年には叡王戦(えいおうせん)が新タイトルとして昇格され8タイトルとなっていますが、新設タイトルのため2017年12月5日時点では永世の称号は存在していません。

永世は引退後に名乗るのが通例で羽生善治さんは2017年12月現在「羽生善治永世竜王」ではなく「羽生善治竜王」と呼ばれることになります。この先数百年以上語り継がれるであろう歴史的な棋士と同じ時代に生まれ歴史を目の前で確認できることは将棋ファンにとってとても幸せなことです。将棋にあまり興味のない方も、この機会に将棋に少しだけ興味を持っていただけたら幸いです。

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